【開発者コラム】なぜ「生データ」にこだわったのか?コナンエアー開発秘話と技術的選択

【開発者コラム】なぜ「生データ」にこだわったのか?コナンエアー開発秘話と技術的選択

なぜ「生データ」にこだわったのか - 中山水熱工業の挑戦

BluetoothでもZigBeeでもなく、あえて「Wi-Fi」を選んだ技術的理由

開発当初、省電力なBluetoothや、通信距離に優れるサブギガ帯(920MHz帯/ZigBee等)も検討のテーブルにはありました。しかし、私たちはそれらを不採用とし、「Wi-Fi」を選択しました。


理由はたった一つ。「生波形」を送りたかったからです。


私たちが目指したのは、単に「振動レベル(数値)」を送るだけのセンサーではなく、異常の原因解析や将来的なAI連携に使える「生データ(波形)」を取得できるデバイスでした。

  • サブギガ帯(920MHz): 通信速度は約40Kbps。これではデータ量が大きい生波形を送るには遅すぎます。
  • Wi-Fi(2.4GHz): 通信速度は約250Kbps以上。生データを実用的な速度で送信可能です。

また、Wi-Fiであれば専用の受信機(ゲートウェイ)を新たに開発・購入しなくても、市販のWi-Fiルーターや既存の社内LANがそのまま使えます。「ユーザーが最も導入しやすいインフラは何か」を考えた結果の選択でした。

ISO基準では見逃してしまう?熟練工の「違和感」を加速度ピーク値で捉えた日

ベアリングの微小な欠陥検知の比較図。ISO速度RMSではしきい値を超えず変化が見られないが、コナンエアーの加速度ピーク値では異常なスパイク波形として早期に検知できることを示すグラフ。
ベアリングの微小な欠陥検知の比較図。ISO速度RMSではしきい値を超えず変化が見られないが、コナンエアーの加速度ピーク値では異常なスパイク波形として早期に検知できることを示すグラフ。

設備保全の現場には「ISO振動シビアリティ(速度RMS)」という絶対的な基準があります。しかし、現場では「数値は基準値内なのに、ベアリングの音がいつもと違う」という熟練工の直感が正しいことが多々あります。


実際にあった事例です。保全担当者が「異音」に気づきベアリングを交換した際、前後のデータをコナンエアーで検証しました。

  • 速度RMS(ISO基準): 変化は微小で、異常ありとは判定できないレベル。
  • 加速度ピーク値(コナンエアー): 明らかな数値の上昇(異常)を検知。

これは、ISO基準が「機械全体の揺れ(エネルギー)」を見るのに対し、コナンエアーの加速度測定が「金属同士の衝突(初期の傷)」を捉えているからです。部外者には聞こえないレベルの異音でも、コナンエアーは熟練工の「耳」と同じように、初期異常のサインを捉えることが実証されました。

技術的常識では「不可能」だった。偶然と失敗から生まれた特許技術

コナンエアーの核心技術である「アンダーサンプリングによる異常検知」は、最初から計算して開発されたものではありませんでした。
もともとは、名工大の先生との「高価な振動センサーではなく、安くて実用的なものが作れないか」という雑談がきっかけでした。市販の安いパーツを組み合わせて試作し、FFT(周波数解析)をしてみたところ、「検知できるはずのない高い周波数の異常」がきれいに表示されたのです。


従来の技術常識では、サンプリング周波数の半分以上の信号はノイズ(エイリアシング)として処理されます。しかし、私たちは「本来ノイズとして捨てられるはずの『折り返し波形』の中に、実は軸受損傷のサインが含まれている」という現象を発見しました。


「なぜ映るのか不思議だ」と原因を突き詰めた結果が、現在の特許技術(日本登録済み/米・独・印・中で出願中)となっています。狙って作った発明ではなく、現場で手を動かしたからこそ出会えた「発見」でした。

タービンには使わないでください。コナンエアーが「苦手」なこと

ポンプ、ファン、搬送機の予知保全におけるコストと性能の「最強」の選択肢として、コナンエアー(conanair)が様々な産業機器とWi-Fiで連携している様子を示すイメージ画像。
ポンプ、ファン、搬送機の予知保全におけるコストと性能の「最強」の選択肢として、コナンエアー(conanair)が様々な産業機器とWi-Fiで連携している様子を示すイメージ画像。

私たちは「どんな現場でも最強です」とは言いません。コナンエアーは、「異常検知から3〜6ヶ月以内にメンテナンス計画を立てられる汎用設備」をターゲットにしています。


そのため、以下のような用途には不向きです。

超重要設備(タービン・大型発電機など)
2年間ノンストップで稼働し、一瞬の異常で緊急停止(トリップ)が必要な設備。これらは数百万円をかけて有線センサーとAEセンサーで監視すべき領域です。
高温・極低温環境
ケースの仕様上、-10℃~60℃の範囲外では使用できません。
精密な品質管理
「絶対値」の精度を保証するものではありません。「普段と比べてどう変化したか(相対値)」を見るトレンド管理に特化しています。
常に高周波ノイズがある環境
常時1kHz以上の強い振動が発生している機械では、独自のアンダーサンプリング技術がノイズを拾い続けてしまうため、正しく診断できません。

逆に言えば、「これまで人の巡回点検に頼っていたポンプ、ファン、搬送機」の予防保全においては、コスト・性能ともに最強の選択肢であると自負しています。


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